集英社みらい文庫大賞受賞者・遠山彼方さんにインタビュー!「公募に挑戦するときに意識してること」
今回は児童書ジャンルで活躍している遠山彼方さんにインタビューをさせていただきました。
児童向けの作品を書くときに大切にしていること、公募に挑戦する際に意識していることなど、詳しくお話を伺います。
児童書やYA向け小説を書いている方は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね!
@kanata_tooyama
エブリスタで開催された第3回ピュアラブ小説大賞(ポプラ社主催)を受賞し「渡会くんの放課後恋愛心理学」でポプラキミノベルからデビュー。著書に「6年B組サイコー化計画!」(ポプラキミノベル)、第12回集英社みらい文庫大賞・大賞作品「相方なんかになりません!転校生はなにわのお笑い男子!?」(集英社みらい文庫)。そのほか「5分後にときめくラスト」(河出書房新社)にも短編が収録。
遠山先生、今回はよろしくお願いします!
専業作家になり、考える機会が増えた
――まず、今回のインタビューを快諾していただき、ありがとうございます。2022年は「6年B組サイコー化計画!」「相方なんかになりません!転校生はなにわのお笑い男子!?」の発売もあり、大活躍されていたように思います。遠山先生は2022年を振り返ってみてどのように思いますか?
遠山さん:年末っぽく漢字1文字で表すと、2022年は「考」です。
今まではなんにも考えず好きなように創作活動をし、「自分が面白いと思ったらいいや!」のスタンスで書いていたのですが、「編集さんや多くの読者の方に読んでもらう」という経験をさせてもらったことで、自分の創作について「考」える機会が多かったように思います。「みらい文庫大賞」をいただくなどうれしいこともあった反面で、企画が没になるなどもしておりまして、「『面白い』ってなんだ……?」と立ち止まることもありました。
さらに個人的な話で恐縮なんですが、諸事情あって新卒入社した会社を辞めまして。「これって一応専業作家ってことかしら」と思う一方、金銭面だとか自分のアイデンティティだとかを考えると「わたしの人生、一体どうなっちゃうの~!?」と、今後の身の振り方を「考」え続ける一年でもありました。
ただし、考えても答えが出ないものは出ないし、今頭の中で某心理学オタクが「ネガティビティバイアスですね」とのたまったので、いつも「そのときの自分」を信じて、2023年は転がりながらでも突き進んでいきたいなぁなんて思っております!(ネガティビティバイアスが気になったら『6年B組サイコー化計画!』をぜひ!笑)
あと、健康は大事です!! 運動超大事!! 「このままだと体を壊す」と思って会社を辞めたのに、フタを開ければ「運動不足すぎて体を壊しまくっていた」ので、来年は筋肉鍛えます。
意識するのは、レーベルとのマッチング
――なるほど。専業作家に憧れるクリエイターも多いと思いますが、苦難もあるのですね。遠山先生は数々の受賞をされていますが、公募に挑戦する際に意識していることはありますか?
遠山さん:「応募してみよう」と思ったら、そのレーベルの既存作(特に受賞作)を読んで、ある程度のマッチングは意識するようにしておりました。いくら面白い話を書いたとしても、「うちのレーベルじゃないな」と思われて落とされてしまうのは凹むので。
たとえば、「渡会くん」であれば、「ポケットショコラ」という児童文庫の中では少しターゲット年齢が高めなレーベルの賞だったので、「多少難しくても大丈夫かな、よし、行こう!」みたいな感じで。ほかの児童文庫の賞なら、「難しすぎる」と落とされていたかもしれません。「キミノベル小説大賞」になった今は、対象年齢が下がったりシリーズ化を視野に入れたりしているので、またかなり違いそうですが。
……とはいえ。「これは結構『チャレンジ』です」みたいなことを編集さんによく言われがちなので、もう、単純に運がよく、たまたまご縁があっただけなのかもしれないです。
子どもの頃の自分が、読みたいと思うかどうか
――傾向や分析をしたうえでも、運やタイミングが必要になるのが公募の難しいところなのかもしれませんね。遠山先生が物語を創るときのアイディアの出し方や、大切にしていることがあれば教えてください。
遠山さん:アイディアを出す上で、とにかく、「自分が読みたいと思うかどうか」という軸は忘れずにいたいと思っています。
特にわたしは児童向けのお話を書く機会が多いので、「子どもの頃の自分が読みたかったお話」になるよう要素を詰め込むことを意識しています。その点で、昔の自分が妄想を綴ったノートやメモはすごく貴重な存在です。そのままでは使えなかったとしても、いくつか妄想を組み合わせると、なんかよさげな物語になったりするので(笑)。
たとえば「渡会くん」は、もともと「心理学専攻の男子大学生がシェアハウスで女の子の恋愛相談に乗る話」という、大人向けの物語でした。けれど、「いや、子ども向けにしてみよう」と思い立ったとき、十代のときに書いた妄想ノートから、「人見知り男女がお互いの人見知りを直そうと密かに同盟を組む話」と、「不登校の男子高校生と、自分らしさを見失った女子高生が、児童館でボランティアをする話」という二つの青春物語の青春要素を抜き取ってみたんです。単体では成り立たないお話だったかもしれませんが、要素を組み合わせたことで、書ききることができたんじゃないかなと思っております。
あとは、「自分が昔好きだった漫画・小説・映画」なんかの要素も、すごく参考になります。「ここはあの漫画っぽくしたいんです!」と、編集さんに訴えかけてしまうこともしばしば(笑)。
児童向け作品を書いていて大変なこと
――児童向け作品を書いていて、苦労することや大変なことを教えてください。
遠山さん:
・話を作っている時→「児童向けだなんて考えないぜ! 子どもも大人も、なにより自分も、ワクワクするような話を書くんじゃあぁぁ!」
・推敲している時→「説明わかりづらいかも」「このセリフ、偏見を与えてしまうのでは?」「ここ、字面固すぎて読みづらい」「また小学校なのに『児童』じゃなくって『生徒』って書いてる! もう!」
……みたいな感じで、このアクセルとブレーキの加減がとても大変です(笑)。
アクセルとブレーキを同時にかけるとうなりをあげるだけで進まないので、基本的にはプロット・キャラ設定という教習が終わると最初からアクセル全開でぶっ飛ばすんですが、たまにブレーキを踏んで地図を見たら道を戻らないといけないときもあるので、そこはもう泣きそうになりながらギアをリバースに入れています(なんの話かわからなくなってきた)。
なお、「児童向けだなんて考えないぜ!」というスタンスは、わたしの大好きな漫画家である藤子・F・不二雄氏の『理想的な児童まんがは、子どもが読んで面白いだけでなく、大人にとっても面白くあるべきです』という言葉の個人的解釈です。なので基本的には「児童向け」「大人向け」とあまり意識せずいきたいんですが、ドラえもんが「子どもがとっつきやすいかわいい絵」で描かれていることが大前提であるように、文章も「子どもが読みやすい文章」であるべきだなぁとは思っております。あ、いや、もちろんゴルゴ13のような劇画の方が好きという子もいると思いますが……(笑)。
書いて、読む!
――なるほど、参考になります! デビュー前に「こんなことをしておけば良かった!」ことや「これからデビューを目指す人におすすめしたいこと」などがあれば教えてください。
遠山さん:「こんなことしておけばよかった!」は、もう、「もっと書いておけばよかった!」の一言に尽きます!
中学時代までは小説を読んだり書いたりすることが好きだったのですが、高校生になって忙しくなると、それ以降すっかり小説の世界から遠ざかってしまっておりました。それが、コロナ禍の中「仕事が休みになってヒマだからやってみよう」と思い立ち今に至るので、未だにさまざまなことに現在進行形で苦労しています。
具体的には、自分の執筆ペースの把握、執筆の習慣づけ、常にアイディアを探そうとする気の持ちよう、物語作りに必要な勉強……。挙げだしたらキリがないのですが、とにかく、ずっと執筆を続けている方と比べたら、圧倒的に執筆の体力と知識が足りていない自負があります。自分の感覚だけに頼っていくのは、あまりにも心もとないしメンタルにもよくないので、自信をつけるという意味でも、今までの経験と知識は大事だなと思いました。今後、数をこなしてがんばっていきたいと思います。
あと、前述の通り「小説を読む」ことからもかなり遠ざかっていたもので、インプットも足りておらず、慌てて勉強中です。インプットが多ければアイディアの引き出しも増えるし、使える表現も増えるし、なにより物語の中でたくさんの人と出会えますし。「こんなに面白い話なんて考えつかないよ!」と絶望することもしばしばなんですが(笑)。
好きな作家、参考にしている作品
――好きな作家や作品、参考にしている作家さんや作品があれば教えて下さい。
◆藤子・F・不二雄先生
上述した通り、神様的な存在です。SF短編集に価値観をぐらつかされるのも好きです。
◆『名探偵コナン』
カッコいいキャラ、ハラハラな展開、小さなころからずっと好き!
◆『ときめきトゥナイト』
ベストオブ少女漫画。わたしの恋愛観を築いた漫画といっても過言ではないです。
◆『赤ちゃんと僕』
人生の教科書。キャラの関係性に笑わずにはいられないし泣かずにもいられない。
◆谷川史子先生
日常を丁寧に切り取った優しい世界に、ひとさじのキュン具合がたまりません!
まだまだ山ほどあるのですが、とんでもないことになりそうなので止めます。
小説・小説家の先生だと、わたしが児童向け小説を書いているのは、小さい頃夢中になって読んだ那須正幹先生(「ズッコケ3人組」)、はやみねかおる先生(「夢水清志郎シリーズ」「都会のトム&ソーヤ」)の作品の影響が大きいです。児童書という点では、「果てしない物語」「ハリーポッター」も。
ティーン・大人向けにも視野を広げると、恩田陸先生、辻村深月先生、乙一先生、西尾維新先生が好きです。
――ありがとうございます!「赤ちゃんと僕」実は、はにぃくんも大好きな作品です!(共通点があって嬉しいです…笑)
遠山先生の作品をはにぃくんが紹介!
心理学を題材にした作品です。登場人物の成長がしっかりと描かれていて、大人でも楽しめること間違いなし!学びとエンターテイメントが両立している、理想的な児童書でした!
小学生のアオハル!主人公のアズサは「渡会くん」の妹です。こちらの作品は心理学の知識を使いながら、小学生ならではの悩みに寄り添っていきます。難しい知識を子どもにもわかりやすく説明していました。子どもだけじゃなく、児童書を書く人にもおすすめしたい一冊!
題材は「お笑い」です。会話文も地の文もテンポが良くて面白いです!お笑いなると、ヒーローをどうかっこよく描写するのか…という部分が気になると思うのですが、登場する笑大くんはすごく魅力的な男の子になっていました!集英社みらい文庫大賞に応募する方は、ぜひ読んでみてください!
――遠山先生、本日は貴重なお話を聞く機会をいただき、本当にありがとうございました!
遠山さん:こちらこそ、ありがとうございました!
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