私とアルファポリス~挫折と落選を繰り返した、その先にあったもの~
小説・漫画の投稿サイト「アルファポリス」。
毎月開催されているWebコンテンツ大賞からは、数々の作家がデビューしています。
今回は、第5回キャラ文芸大賞を受賞し、2023年7月に書籍化デビューする蒼真まこさんにエッセイを寄稿していただきました。
創作をする人の道の先には、大きな壁や、険しい谷、深い穴もあるのかもしれません。
それでも、なぜ創り続けるのか――
物語の世界が、好き
物語を創る人になりたい──。
初めてそう思ったのは小学生の頃だったと思います。
マンガと学校の図書室にある本を読むのが大好きな子どもでした。
最初はマンガ家になりたいと思い、マンガ家入門といった初心者向けの指南書を参考に、イラストを描くことから始めてみました。
ところがどれだけ描いても絵はちっとも上手くならない。下手くそすぎる自分の絵を見るのが嫌で、いつしか描くことを諦めてしまいました。
「私にはマンガを描く才能がないんだ……」
早々に自分自身の可能性に見切りをつけてしまいました。最初の挫折ですね。
それでもマンガや小説を読むことは止められませんでした。
好きだったのです、物語の世界が。
物語の世界は私を楽しませてくれるだけでなく、時には生きていく力も与えてくれました。
辛いとき、悲しいとき、いつもそばには大好きな本がありました。
そんな私でしたから、大人になっても心の奥底に「物語を創る人になりたい」という思いがくすぶっていました。
小説なら、なんとか書けるかもしれない……。
いつしか私は、文章を書くことを意識し始めるようになります。
苦い経験
小説の書き方がよくわからなくて、カルチャーセンターの小説教室に入ってみました。
ところが講師の先生が初心者であってもとことんダメ出しをする人で。
生まれて初めて書いた小説(のようなもの)を全受講生の前に貼り出され「あなたの作品はダメすぎる!」と徹底的に叩かれました。(当時は小説の書き方なんて何も知らなかったのです)
私の創作意欲は一気にしぼんでしまいます。小説教室は一回だけで辞めてしまいました。
ここでもまた挫折。
時は経ち、近隣で「童話の書き方」という講座が開催されていることを知ります。
「童話……何か書いてみたいかも」
思い出すのは、小説教室での苦い経験。
講師にダメ出しされまくることがトラウマになってました。
でも受講料が安心価格だったこともあり、思い切って通ってみることに。
童話教室の講師は小学校の教師をしていた方で、後に児童書の作家になられた方です。
先生は「下手と思ってもいいから、まずは最後まで書いてみること」「他の人の作品も読み、欠点に気づいても最初に良い点を伝え、その後に良くないと思う部分を伝えましょう」ということを大切にされている方でした。
先生の教え方に感銘を受けた私は、再び物語を書き始めます。
「書き上げたら、合評会に参加したり公募に応募してみましょう」というのが先生の方針でしたので、おそるおそる公募にも応募するようになりました。
ですが応募したものはすべて落選。
また挫折……となりそうでしたが、しばし書くことを休むことはあっても不思議とやめようとは思いませんでした。
もう、逃げたくない
「もう書くことから、物語を創ることから逃げたくない──」
物語が大好きでも数々の挫折経験から、いつも逃げてばかりだったのです。
折れてもそこから再び立ち上がり、前に進む勇気をもつことができなかった。
「今度はとことん頑張ってみよう。落選しても、そこで折れたら昔と何も変わらない」
書くことが精神的な救いになっていたのも、書き続ける理由のひとつでした。
ネット小説からの書籍化が人気作になることも珍しくない時代でしたので、投稿サイトにも興味を持ち始めました。
サイトから直接応募できる気軽さも魅力的でした。今はいろんな投稿サイトがありますね。
いろんなサイトを見てきましたが、私が注目したのはコンテストのチャンスが多いサイトでした。
アルファポリスとの出会いと、これから
アルファポリスもそのひとつ。
書籍化の可能性のあるコンテスト(webコンテンツ大賞)が毎月行われていて、しかもジャンルごとに開催されている。オールジャンル応募可能という小説大賞が多い中で、固定のジャンルを月ごとに審査するコンテストは珍しいと思います。
もうひとつ興味をもった部分があります。
アルファポリスは童話も応募可能で、コンテストも開催しているということ。
最初は絵本だけの出版でしたが、いずれ児童書レーベルも立ち上げるのでは?と思っていました。(後にこの予感は当たりました)
アルファポリスのコンテストにも何度も応募しました。
でもここでもやっぱり落選。奨励賞にも残れませんでした。(奨励賞に残れると書籍化の打診がくることもある)
最初は未完作ばかりの応募でしたので、当然なのですけどね。未完でも応募は可能というコンテストは増えていますが、それでも完結作や、ある程度の文字数(最低でも3万〜5万字以上)がある作品のほうが評価されやすいと思います。
そこにやっと気づいた私は完結作で応募することを目標にします。
そうすると、他サイトではありましたが、徐々に一次選考や二次選考を通過するようになりました。
やがて自分が得意と思うジャンルに気づき、アルファポリスの「ほっこり・じんわり大賞」(以下ほこじん大賞)に狙いを定めます。
ジャンルはあやかしが出てくる物語でしたのでキャラ文芸にしました。(ほこじん大賞は異世界系ファンタジー以外ならば応募可能なのです)
ランキングも悪くなく、これはひょっとしたら……と期待したのですが、ここでもやっぱり奨励賞に残ることなく落選。自分なりに自信作でしたので、落ち込みましたね……。
何がダメだったのか悶々と悩みながら、やがてキャラ文芸大賞開催のお知らせがきました。
どうせまたダメだと思いながら、他の作品と合わせてエントリーしました。我ながら諦め悪いなと思いながらも、正直全く期待していませんでした。なにせ一度落選してますし。
ところが結果は、キャラ文芸大賞家族賞受賞。
お知らせをいただいたとき、最初の声が「え、うそでしょ?」だったことをよく覚えています。
ほこじん大賞でダメだった作品がなぜキャラ文芸大賞では評価されたのか? 審査方法に関しては私はよくわかりません。けれど諦めずに応募したから、受賞することができたと思います。
やがて書籍化の打診をいただき、改稿を経て2023年7月にデビュー作が出版されることが決定しました。
タイトルは『半妖のいもうと あやかしの妹が家族になります』です。
ほっこりしていて、じわりと泣ける家族ファンタジーの物語。多くの方に楽しんでいただけたらと願っています。
挫折や落選を何度経験しても、諦めなかったから私は作家になることができたのだと思います。
作家という世界は、初めて書いた小説で受賞したり、打診を受けてデビューしたりする人もいる世界です。そのまま人気作家になることも珍しくない。そういった方には私の経験は何の参考にもなりません。
けれども、書いても書いても思うように結果を出せないと悩んでいる方に少しでも参考になれば嬉しいです。
私も作家として始まったばかりです。これからどうなるかは私にもわかりません。
けれど諦めず、一歩一歩頑張っていきたいと思っています。
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