小説家になろう広報戦略|自作のどこに広報戦略上の問題があるかを調べる方法【アクセス解析】

hisa広報戦略

「小説家になろう」に作品を投稿したけど、なんだか全然読んでもらえない……。

宣伝の方法も色々あるけれど、うまくできているのか不安になることはありませんか?

今回は、そんな悩みに寄り添う『小説家になろう広報戦略』の第2弾です!

はにぃくん

前回に引き続き、小説家になろうユーザーのhisaさんにご寄稿をいただきました!

この記事はこんな人におすすめ!
  • 小説家になろうを利用している
  • 自作の読者を増やしたい
  • 自作のどこに問題があるのかを知りたい
hisa

みなさま、お久しぶりです。hisaです。

半年ほど前に、Web Novel Laboに『「小説家になろう広報戦略」の記事を寄稿させていただいたのですが、覚えていらっしゃいますでしょうか?

ちなみに前回は、なろうで長編小説が読まれない作者のために、なろうにおける広報戦略の概要と、読み始めてもらうまでのテクニックをご紹介しました

まだ読まれていない方は、そちらを一読してからこちらの記事を読むことをオススメします。

さて、今回は前回からは一歩踏み込んで、広報戦略の各フェーズの達成度を、読者の反応から分析する手法について解説していきたいと思います。

なお、この記事は、多くの物言わぬ読者の反応から長編小説の問題点を分析するためのものであり、「すでにランキングを撃ち抜いて安定的に上位にいる」、「読者に読まれるために書いていない」というタイプの作者様には合わないと思われますので、その点はご注意ください。

目次

広報戦略のフェーズ

それでは「小説家になろうの広報戦略」のおさらいからです。

それぞれのフェーズに影響する要素を追記してまとめてみました。

STEP
『見つけてもらう』フェーズ
  • 更新タイミング(トップページ更新欄への掲載)
  • 完結(トップページ完結欄への掲載)
  • 読者からのレビュー(レビューページへの掲載)
  • ランキング掲載
  • 外部ランキング掲載
STEP
『興味を持ってもらう』フェーズ
  • タイトル
  • あらすじ
  • 各話タイトル
  • 読者からのレビュー
STEP
『読み始めてもらう』フェーズ
  • 第1話のインパクト
  • 第1話の文章・描写がきちんと読者に伝わるものか
  • 読者の第一印象と一致するか
STEP
『読み続けてもらう』フェーズ
  • 文章力
  • ストーリー構成
  • 登場人物
  • 世界観
  • 期待感

 

さて、あなたは今現在、自作にこの中のどれが足りていないか、具体的に、根拠を持って分析することはできるでしょうか?

「KASASAGI」から分析をする

実は、なろうには標準機能として、作品の問題点を分析できる機能が備わっています。

一度、自作のページを開いてみてください。

読者向けの作品ページであれば上部の「作品情報」内に「アクセス解析」というメニューがあります。

出典:転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜小説情報ページ

作者向けの小説管理ページであれば直接「アクセス解析」に入れます。

アクセス解析場所
出店:小説家になろう管理ページ

これは「KASASAGI」と呼ばれるなろう特有のアクセス解析システムなのですが、ここの「部分別」というタブを開くと、各話の日付ごとのユニークPVを見ることができます。

出展:転生した受験生の異世界成り上がり部分別ページ

試しに直近の更新日のものを見てください。

10万文字以上の長編であれば、閲覧に複数日かかるので複数日集計したほうが良いのですが、その場合は手動で計算しなければなりません。

これを見れば、自作の問題点をある程度把握できます。

本家のものはわかりにくいので、解説しやすいよう、見やすい棒グラフにしてみました。

では、ここからどのようなことが分かるでしょうか?

1話への流入読者数を見る

まず最初に注目すべきは、第1話(図中①参照)部分です。

ネット小説は1話から順番に読むものですので、1話への流入読者数を見れば、『見つけてもらう』『興味をもってもらう』の両フェーズがうまくいっているか判別できます。

この二つのフェーズを超えないと、読者は第1話を開かないので、当然ですね。

ここが少ないようなら、以前の記事を参考に、更新時間やタイトル、あらすじなどを変えて読者の興味をひけるようにすると良いでしょう。

<一口メモ>
なろうのトップページの更新は5分間隔ですが、5分で10作品以上更新されると、トップページの更新欄に作品を掲載できない可能性が高くなります。

しかし、毎時、9分、14分、19分、24分、29分(以下略)に作品を更新すると、その1分に10作品更新されていない限り、トップページに掲載されることが可能になります。(注:毎時04分と54分、59分は予約更新と競合するので避けるべし)
※たまに処理が遅れることがあるようです。
なろうのトップページは読者流入が一番多い経路ですので、取りこぼさないようにしましょう。
なお、このメモの通りに更新した場合、実際に反映されるのは6分後となります。

序盤の読者脱落割合を見る

次に見るべきは序盤の読者脱落割合(図中②参照)です。

ここは『読みはじめてもらう』フェーズがうまくいっているかどうかの指標になります。

例えば1話と2話の間で8割以上の読者を失っているようであれば、文章力や描写力など、小説としての基礎的な要素が欠如している可能性があります。

たまたま読みに来た読者全員が忍耐力がないとは考えにくいため、基礎から修行をやり直したほうが良いでしょう。

その上で、その作品は1から書き直すことを推奨します。

序盤全体で7割以上の読者を失っている場合は、序盤のインパクト不足や、タイトルと内容の齟齬が疑われます。

読者は一度作品への期待を失って読むのをやめてしまうと、続きを読んでくれません。

序盤でいかに読者を引き留められるかどうかで、その後の作品のPV数が大きく左右されます。

がんばって引き留めましょう。

<一口メモ>

例として、考えうる中でもかなり悪い部類のPV分布を用意してみました。

もしも自分の作品の分布がずっとこうなっていたとしたら、更新時にPVがついていたとしても、ほとんどの読者はあなたの作品を読んでいません。

いろいろ迷いはあるかもしれませんが、この場合完結よりも大事なことがあるかもしれません。

 

安定期に注視すべき箇所

そして序盤の読者脱落の下り坂を抜けると、安定期(図中③参照)に入ります。

安定期まで読み進めてくれた読者は、作品を受け入れてくれた読者と思って間違いありません。

作者として、最もその動向を注視する必要があるゾーンです。

徐々に読者が減っている場合は、ストーリー展開や登場人物に問題を抱えている可能性もあります。

さらに、顕著に読者が減るような話数があった場合は、その1話手前で読者が力尽きています。

そういう現象が見られた場合は、原因となった話の説得力を補強する等、読者離れを防ぐ工夫が必要になるかもしれません。

同じ展開の話でも、説得力の有無で読者離れは防げます。

理論上の読破率を算出する

話数がある程度増えてくると、安定期の最後(図中④参照)あたりから、理論上の読破率が算出できるようになります。

①の数字と④を比較して、読者がどの程度残っているかを割合で算出すれば、その作品の将来性がある程度占えます。

ちなみに書籍化を狙うなら、最低でも4割、できれば5割程度の読破率を確保しておく必要があります。(これは相当なハイレベルです)

なお、公表後でも、諦める必要はありません。

再推敲や再校正して表現を平易にしたり、各話の切れ目を調整したり、細かい改稿すると回復することがあります。(私の作品では、二度の改稿で一週間ベースの読破率が10%→35%まで回復しました)

逆に言うと、読破率が高い状態で完結すれば、完結ブーストの波も高いものになるはずです。

作品を完結させると、時間帯にもよりますが、7時間程度はなろうのトップページの完結欄に滞留できます。

これは通常の更新で掲載される5分の80倍以上になり、広報戦略がうまくいっていれば、PVもポイントも80倍以上にできる可能性があります。

完結までに読破率を高められるよう、いろいろ工夫するようにしましょう。

固定読者を把握する

最後に残ったのが固定読者数(図中⑤参照)の把握になります。

最新話近辺の山から直近の読破者数を差し引くことで規模を予想できますが、その数はあなたの作品のファンの数です。

例えば、毎話新規読者が40人ついて、そのうち20人が固定読者として残ってくれたとしたら、100話時点で固定読者は2,000人になっている計算になります。

1話更新したら2,000PVは確実に読んでもらえる。心強い応援団だと思いませんか?

<一口メモ>
各話のユニークPVから読者動向を分析する場合、宣伝する際のURLには注意してください。

更新したページに直接リンクしてしまうと、新規読者が更新したばかりの最新話を最初に踏んでPVを残すことになり、正確なデータが取得できなくなります。

宣伝は必ず作品のトップページURLを貼るようにしましょう。

おわりに

と、いうわけで各話のユニークPVから作品を分析する手法はこれで終わりです。

いかがだったでしょうか?

Twitterなどでは、「良い作品を書けば埋もれない。埋もれるのは良い作品ではないから」という根拠のない信仰がつぶやかれているのをたまに見かけます。

しかしもしそうであるなら、この世の『広告』に意味などないことになります。

ところが、日本の広告費は2021年時点で総額約7兆円。

本当に良いものを作るだけで世間に浸透するなら、『広告』にこれほどの資金が集まるでしょうか?

広告を含めた広報は、良いものを広く報せて、広く報いる、作者と読者双方の力にもなるものです。

広報戦略を立てて、地味にコツコツ実行して、読者の声なき声を聞いて、必要な箇所を改善して、そうやってたくさんの読者に自分の作品が届けば、素晴らしいとは思いませんか?

皆様が、明るい創作活動を永く続けられることを祈っています。

と、いうわけで、本日はこれまで~。

ゲストライター:hisa
  • おっさん。既婚。
  • 19歳ぐらいの頃から、まだ日記サイトだった「魔法のiらんど」や「作家でご飯」で活動し、複数の小説系サークルを主催。
  • 関係会社あわせて従業員数5万人ぐらいの職場に就職したことをきっかけに、作家活動から撤退。同じ会社内で建築系、システム系、広報系、福祉系を経て、現在は教育系。
  • 2年ほど前に、約20年ぶりに小説界隈に戻ってきた浦島太郎。 守備範囲は小説、インテリア、猫、システム、広報、お酒などなど。
  • 座右の銘は「責難は成事にあらず」。 ちなみに、小説の批評は客観的な視点で話せるなら辛口の方が良い気がしてる。
はにぃくん

hisaさん、ご寄稿ありがとうございました!!
hisaさんの作品を読むと分析を活かして作品作りをされているのがよくわかるので、ぜひ転生した受験生の異世界成り上がりも読んでみてくださいね♪

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